Apple社と知的財産(その1)
ご存じApple社のiPhoneですが、携帯通信会社のiPhoneのサイトを見ると、下の方に「iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されています。」という注意書きが書かれています。この注意書きには、どのような意味があるのでしょうか?
これまでApple社は、iMac, iPod, iPhone, iPadなど頭にi(アイ)の付く商品・サービス名を展開してきました。このようなシンプルな名称は商標登録がしにくい場合も良くあります。なかでもiPhoneは電話を意味する一般的な名詞Phoneにi(アイ)を付けたに過ぎないものなので、すんなり商標登録はできなかったようです。
一般的に特許庁に商標登録出願を行うと、商標(名称・マークなど)と指定商品・サービスの両方について類似する先行商標がないか等について審査が行われます。アイホン株式会社は商標「アイホン」、指定商品「電信機,電話機」について商標登録をしています。玄関のインターホンで有名な会社、製品です。このためApple社が商標「iPhone」、指定商品「電話機」又は「携帯電話機」などで商標登録出願を行っても、上記アイホン株式会社の商標に基づき拒絶されることが予想されます。また、Apple社が商標「iPhone」を使用すると商標権侵害となるでしょう。
このため、Apple社はアイホン株式会社とライセンス(使用許諾)交渉を行って、商標「iPhone」の使用を確保したのだと予想されます。このような交渉の内容は非公開ですので正確な内容はわかりません。ただし、新聞等でiPhoneに関する記事を見るとiPhone(アイフォーン)というように片仮名では「アイフォーン」と表記されています。この表記についても、交渉で何らかの取り決めがあるのかも知れません。また、アイホン株式会社は、Apple社が使用する商標「iPhone」についても指定商品「携帯電話機」等について商標登録をしていますので、これについても何か取り決めがあるのではないかと思われます。
日本でiPhoneが発売されて6年以上経ちますが(2014年10月現在)、これまでにアイホン株式会社の商標「アイホン」とApple社のiPhoneとで誤認混同等が生じているということはないように思われます。このように、形式的には類似する商標が存在していて商標登録できず侵害になるような場面でも、ライセンス交渉によってうまく棲み分けることができる場合があります。ですので、使用を希望する商標について他社の類似商標がある場合でも、すぐにはあきらめずにこのようなライセンス交渉の可能性についても検討してみるのがよいかと思います。