国内優先権主張出願について。

補正に関するコラムで書きましたが、特許出願をした後に新規事項を追加することはできません。それでは、出願した明細書に重大な欠陥が見つかった場合はどうすればよいでしょう?

ここで、「重大な」というのは補正で治癒できない程度のという意味です。例えば当業者(その発明の技術分野に属する人)から見て誤記であることが明らかな誤りは、当初明細書等の記載から自明な事項に該当しますので補正で直すことができます。

これに対して、説明が足りずに発明を実施できないとか、説明に間違いがあってそのために発明を実施できないという場合は補正によって治癒することができません。

そのような場合、出願から1年以内であれば(他にも要件があります)、先の出願の優先権を主張して新たな出願をすることができます。これを、国内優先権主張出願といいます。この場合、新規性・進歩性などの判断については、先の出願に記載された事項については先の出願日で判断され、後の出願にのみ記載されている事項は後の出願日で判断されます。従って、1年以内であってもなるべく早く出願するのが望ましいです。

他にも、国内優先権主張出願は、先の出願をした後に新たな実施例が分かった場合に、その実施例を追加して包括的な出願とするような場合にも使われます。しかし、特許請求の範囲(クレーム)の記載を変更して範囲を拡大したり、クレームの記載はそのままであっても実施例を追加した結果クレーム範囲が広くなったりする場合は注意が必要です。後から、先の出願と後の出願との間の引用文献であってクレーム範囲が広くなった部分にちょうど該当する引用文献が見つかると、その部分には優先権がきかないため当該引用文献によって拒絶される可能性があるためです。そのようなことはあまり起きないとは思いますが、実際に訴訟で争われた事件なのです。国内優先権制度は便利な制度でもありますが、同時に、細心の注意が必要な制度であるとも思います。 以上

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