特許の出願日認定要件の改正について。

 我が国の特許法条約(Patent Law Treaty)への加入に伴い、これを担保する規定を含む改正法が平成2841日に施行されました。

 今回はそのうち、特許についての出願日認定要件の明確化及び手続の補完(特許法第38条の2)について書きたいと思います。

 特許出願について、①特許を受けようとする旨の表示が明確であり、②出願人の氏名・名称の記載があって出願人を特定できる程度に明確であり、③明細書が添付されていれば、願書提出日が出願日として認定されます。

 これにより、特許庁HPにも紹介されているように、例えば、明細書の代わりに大学の研究論文を願書に添付して出願すれば、出願日の認定の際は、その研究論文が明細書として扱われ出願日が認定されます。

 しかし、この場合、特許請求の範囲(クレーム)は含まれていないでしょうし、その裏付け(サポート)となり得る記載も含まれていない可能性があります。ですので、補正のみで対応しようとすると新規事項の追加となる可能性が高いと思われますので、特許庁HPでも提案されているように当該研究論文による出願を基礎とする国内優先権主張出願(後の出願)をすることが考えられます。

 この場合、後の出願のみに記載されている内容については後の出願日が特許要件(新規性・進歩性等)の判断基準日となりますので、研究論文の内容から上位概念を抽出したようなクレームを後の出願で提出した場合、後の出願日で特許要件が判断されると思われます。

 従いまして、研究論文を明細書として提出する方法は、例えばライバルがいて出願を一刻も早くしなければいけないような状況では一考の余地があると思われます。ただし我々弁理士であれば比較的短期間でクレームを作成して通常の出願として提出することができますので、それほど使う機会はないのかなという気が今のところはしています。

 あとは、後願排除を目的とする出願であれば簡単に出願できるため使えるかも知れません。研究論文であっても発表すれば公知資料となるため、法律上は特許出願までする必要はないのですが、出願すれば他人の出願の審査の際に確実に引用されますし、日付も明確なので証拠力が強いというメリットがあります。

 なお、米国では以前から仮出願(Provisional Application)という、クレーム無しで出願できる制度があり、比較的よく利用されていますので、我が国でも今回の制度が利用される可能性はあると思います。当事務所でもクライアントの方にとって最善な方策を検討していきたいと思います。 以上

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